JSBNによる出前授業「未来構想プロジェクト」

高校生にとって、将来を考える上で多様な大人たちに出会うことはとても大切なこと。一方で、学校にいるだけでは、なかなか家族と先生以外の大人たちと会うことは困難です。こうした課題を解決すべく「日本学生社会人ネットワーク(以下、JSBN)」が提供しているのが高校生の可能性を広げるプログラムです。 JSBNは「日本を元気にしたい」と考える学生と社会人が、世代やバックグラウンドを超えてつながっているネットワーク。活動を開始してから3年間で合計5000名以上の人々が活動に参加しています。第一線で活躍する社会人サポーターの方を招いての講演会やトークセッション、社会人と学生の交流会、高校生向け出前キャリア授業、JSBN未来塾の運営など、様々な活動を展開しています。 そんなJSBNが、2015年10月24日(土)に学校法人桐蔭学園にて出前授業を実施。学校での授業や公式行事を手がけ、高校2年生に当たる中等教育5年生170名全員を対象としたイベントを開催しました。イベントに参加した生徒たちは20名ほどずつ各教室に分かれ、さらに3つのグループに分かれて「今の時代に必要とされる理想の人物像」について議論。



「失敗はするべきか」「コミュニケーション能力は必要なのか」「リーダーシップはどう身につければよいのか」「日本人らしさとは何か、グローバル人材とは何か」といった様々な視点から意見を交わしていました。生徒たちは、JSBNの大学生や社会人によるメンタリングを受けながら、グループごとに考えをブラッシュアップしていき、最終的に各教室で人物像を作り上げました。




教室ごとに生徒たちが作成した人物像は、教室の代表となった生徒が生徒、先生、JSBNのメンバーが一堂に会した全体発表会でプレゼン。先生が「普段は人前に立つことも苦手な子」と語っていた生徒でも、学年全員と21名もの社会人と大学生、合計200人以上の人を前にして、堂々とスピーチをしていました。



このイベントは、桐蔭学園の高校生主体で企画・運営されており、JSBNの社会人や大学生たちと、高校生のプロジェクトチームが何度も打ち合わせを重ねたことで実現しています。社会人や大学生といった大人たちからのメンタリングや議論を経て、まとめられた内容を大勢の前で発表する、イベント自体を生徒が運営する経験を通じて、これからの時代を生き抜く力を培っていくというプログラムです。

「未来構想プロジェクト」が実現されるまで

「未来構想プロジェクト」が実施された背景には、JSBN運営スタッフの強力なサポートはもちろん、桐蔭学園で教鞭をとる松井講介先生の尽力がありました。全国でもまだ事例の少ないこの活動は、いかにして実行されていったのでしょうか。
開催の立役者である松井先生と、JSBN代表であり、BNPパリバ銀行投資銀行本部部長の真坂 淳さん、JSBN未来塾 塾長であり、ユニリーバジャパン・取締役人事総務本部長の島田 由香さんのお三方にお話を伺いました。

ーーー「未来構想プロジェクト」はどういった経緯でスタートしたのでしょうか。

真坂さん「最初は、JSBNに所属する大学生が「自分の母校に恩返しをしたい」と言い始めたことがきっかけでした。JSBNに所属しているような、多様な世界で活躍する魅力的な社会人を母校に連れていって、話をしてほしいと相談されて。その子の母校は千葉県立東葛飾高等学校だったので、まずそこで開催しました。桐蔭学園もたまたまご縁があって開催させてもらうことになりました。」

島田さん「学校でこうした新しいプログラムを実施するのがなかなか難しい中、教え子からの希望でその点を突破していくというのは、ものすごいイノベーションだと思います。先生も自分の生徒から言われたらなんとかしたいと思いますよね。こうした活動を実施することで、行動を起こせる子どもたちをここから生み出していくことにもつながります。」

ーーー「未来構想プロジェクト」が持つ価値はどういったものなのでしょうか。

真坂さん「様々な世界で活躍される多様な世代の社会人の皆さんや、志高い大学生たちが、休日に時間をかけて参加してくれるということに高い価値があると思います。

多様な社会経験を積んだ方々と、教育のプロである学校の先生方、そして、熱い情熱を持った高校生が、プロジェクトチームを作り、試行錯誤を重ね、今までにないプログラムを生み出しています

桐蔭学園中等教育学校では、学校の公式授業の時間を割いて頂き、2日間に渡り高校2年生全員170名向けの出前授業「未来構想プロジェクト」を実施しました。千葉県立東葛飾高校でも、学校の公式行事に組み込まれ100名を超える希望参加者を対象にイベントを開催、早稲田大学高等学院では、高校2年生480人を対象とした出前キャリア授業プログラムを学校の公式プログラムとして実施しました。3つの学校に共通するのは、熱い情熱と高い問題意識を持った先生と生徒がいらっしゃるということですね。これは新しい教育の形なのでは、と考えています」

島田さん「子ども達はものすごいものを持って生まれてきています。ただ、それが全部使い切れていない現状を感じています。その要因の一つとして、成長する過程で知り合う大人の数が少ないことが原因として挙げられます。親や学校の先生といった限られた人数の大人たちから得た価値観で、自分のアイデンティティができてしまう。中高生の時期は、素敵な大人と接する機会が多ければ多いほど良い。そうすることで、色んな価値観に触れることができます。これがダイバーシティ教育だと思いますし、ここからリーダーシップが生まれると思っています」

ーーー実施してみて反応はいかがでした?

松井先生「開催するまではどんな反応があるかわかりませんでした。ただ、高校生たちが「自分たちで作りたい」ということを言っていて、たまたまJSBNとつながりもあったのでやってみようか、ということで第1回を実施してみました。そうしたら、その先輩たちの動きを見ていた後輩たちが「自分たちもやりたい」と行って来まして、第2回も開催することに。今回運営した生徒たちの後輩たちが運営を手伝っていて「次に自分たちが開催するときはどうしようか」と考えていたようです。生徒同士でこうした活動が根付いていったらいいですよね。」

島田さん「大人が一方的に教えるのではなく、高校生が自主的に開催することに意義がありますよね。彼らが「大人を動かす」という成功体験を得ることは、この後の成長の大きな糧になると思います。」

真坂さん「最初開催したときは、先生にも好評だったんですよね。」

松井先生「先生たちも驚いていましたね。普段から面倒を見ている生徒たちが、こんなに短時間で生徒が変わるなんて、と。」

島田さん「こうした学校でイベントとして開催できることに価値があると思います。私たちがこうした活動ができたのも、松井先生がいてくれたおかげです。こうした活動を学校で実施するには、学校内の調整ができ、アンテナを広く張っていて、生徒に慕われている先生の存在がとても大切になりますから。」

ーーー今後、この活動はどうされていく予定ですか?

真坂さん「今後は、関東地区だけではなくて、様々な学校が同じような体験ができるように、web配信を実施したり、様々な地区の学校が修学旅行で東京にやってくるタイミングでこうした機会を設けられたら素晴らしいと思います。我々の活動範囲よりも遠方の学校に通う子どもたちのほうが、機会が少ないようですから。」

島田さん「広げることももちろん大事ですが、同じ学校でこうした活動がしっかりと根付くまで継続していくことも大切だと思います。桐蔭学園のように、1回、2回と開催しているところで、今後も継続的に開催していけたらと思います。」

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